ヒト膜性腎症のモデルであるラットのハイマン腎炎の病因抗原として、我々は分子量120kDの糖タンパク(gp120)を分離した。このgp120抗原は、ラット腎近位尿細管刷子縁に存在し、既にアミノ酸配列も解読されているメガリン(600kD)のN末端から1834番から2610番のアミノ酸配列の中に存在することが明らかに出来た。このgp120抗原は、正常ラットに免疫すると、大量の尿蛋白を排泄する典型的な膜性腎症を4-8週後に発症する。 我々は、gp120上の腎炎発症に関与するエピトープ(最小単位のペプチド鎖)を決定すべく、gp120の各部分のcDNAを合成し、それぞれ大腸菌に組み込んでリコンビナント抗原蛋白の産生を試みているが、現在、産生された蛋白を精製し、それぞれの抗原性を検討している。それらの結果に基づいて、さらに新たなcDNAを合成し、エピトープを同定できると考えている。 一方では、gp120のアミノ酸配列より、抗体産生を起こし易い配列部位のペプチドを合成し、それぞれを家兎に免疫して抗体を作成し、それらの抗体の受身ハイマン腎炎の惹起能を検討することにより、gp120上のエピトープを同定できると考え研究を続けている。 海外でもハイマン腎炎の病因抗原の同定は、多くの研究者により試みられているが、発表されたエピトープはそれぞれメガリンの異なるペプチド鎖上にあり、かつ、腎炎の惹起能は極めて弱く、従って未だ結論は得られていない。
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