研究課題/領域番号 |
11671028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長瀬 美樹 東京大学, 医学部・附属病院分院, 教務職員 (60302733)
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研究分担者 |
安東 克之 東京大学, 保健センター, 講師 (60184313)
要 伸也 東京大学, 医学部・附属病院分院, 助手 (60224581)
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キーワード | 腎臓 / 高血圧 / 糸球体硬化 / 酸化LDL受容体 / 血管内皮細胞 / LOX-1 |
研究概要 |
LOX-1とは1997年に同定された血管内皮細胞における主要な酸化LDL受容体である。最近、LOX-1が内皮機能障害を惹起して動脈硬化促進的に作用することを示唆する報告がなされている。本研究では糸球体硬化と動脈硬化の類似性から糸球体硬化の進展過程においてもLOX-1が重要な役割を果たすという仮説を立て、それを検証するために以下の検討を行った。 まず、糸球体硬化モデルのひとつであるDahl食塩感受性高血圧ラットの腎臓においてLOX-1の発現レベルを検討した。4週齢のDahl食塩感受性(DS)ラット、食塩抵抗性(DR)ラットをそれぞれ0.3%ないし8%食塩食で飼育した。一部の食塩負荷DSラットには降圧薬(Ca拮抗薬低用量または高用量)を連日経口投与した。4週間後、食塩負荷DSラットのみで高血圧、腎機能障害、糸球体硬化の指標と考えられるTGF-βやコラーゲンの発現亢進などとともに、LOX-1の著明な発現亢進を認めた。LOX-1の発現亢進は食塩負荷の期間を延長するとさらに高まり、逆に降圧薬により用量依存的に軽減した。 LOX-1のmRNA、タンパクの腎臓内局在をin situ hybridization法、免疫組織染色法にて調べると、糸球体にLOX-1の発現が認められた。血管外膜、間質の細胞にも発現がみられた。また、糸球体分画におけるLOX-1の発現も食塩負荷DSラットで増加しており、降圧薬投与により抑制された。糸球体のどの細胞に発現しているかはまだ特定できていないが、少なくとも培養糸球体内皮細胞においてはLOX-1は発現していた。 他方、16週齢の自然発症高血圧ラット(SHR)では全身血圧の上昇を呈するものの腎機能は正常で、糸球体硬化の所見を認めなかった。このラットではLOX-1の発現も亢進していなかった。 LOX-1が高血圧性糸球体硬化を進展させる分子機序については、糸球体高血圧などの要因によって亢進したLOX-1が内皮の活性化を惹起し、LOX-1の下流候補因子である接着分子やケモカインの発現を誘導してinflammation、細胞外マトリックスの増生などを来たし、腎硬化を進展させている可能性がある。
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