PAFと同様、脂質メディエーターの一種であるロイコトリエンB4は血球細胞の遊走、白血球の脱顆粒、血管内皮への接着などの生物作用を有している。一方、腎疾患の進行因子として、糸球体高血圧説はよく知られているが、最近の報告では細胞浸潤を抑制することによって腎機能の悪化を抑制されることが明らかになっている。従って、炎症細胞を始めとする種々の細胞の炎症の場への走化因子であるロイコトリエンB4と腎障害の関連を検討した。 先ず、ロイコトリエンB4は最終的にロイコトリエンA4ハイドロレースという酵素産生されるが、この酵素の腎内での存在、分布をRT-PCR、Western blotting、免疫組織化学を用いて検討した。その結果、本酵素は腎内にほぼ一様に存在し、糸球体のみならず、尿細管もアラキドン酸とカルシウムイオノフォアとの共刺激によりロイコトリエンB4を産生することを明らかにした(Kdny Int 1999)。また、この酵素は腎臓のみならず心臓にも豊富に存在し、アンギオテンシン等による高血圧モデルで発現が増強することが確認された(FEBS lett 1999)。また、ラットのロイコトリエンB4受容体のクローニングにも成功した(Biochem Biophys Res Commun)。さらに、急性腎不全モデルである、腎虚血再灌流においても、ロイコトリエンB4受容体を組み込んだCHO細胞を用いて、ロイコトリエンB4によって好中球、マクロファージが浸潤し、腎機能の悪化がもたらされ、ロイコトリエンB4受容体拮抗剤によってこの悪化が軽減されることを明らかにした(Pro Natl Acad Sci USA2000)。
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