腎糸球体上皮細胞足突起間のスリット膜の透過性制御機構の解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11671031
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 河内 裕 新潟大学, 医学部, 助教授 (60242400)
• 研究分担者: 折笠 道昭 新潟大学, 医学部, 教授 (30185681) ; 清水 不二雄 新潟大学, 医学部, 教授 (40012728)
• キーワード: 糸球体 / 上皮細胞 / スリット膜 / ネフリン / 蛋白尿 / 5-1-6抗体

研究概要

糸球体上皮細胞足突起間のスリット膜の構造、機能の解析を目的として研究を続けてきた。本研究課題のこれまでの検討で、(1)蛋白尿惹起抗体5-1-6は、先天性ネフローゼ症候群の責任遺伝子の産物として同定されたネフリンのextracellular siteを認識していること。(2)蛋白尿出現時、ネフリン、並びにスリット膜の基部に存在するZO-1の発現量が低下していること。(3)ネフリン発現は、糸球体透過性制御の維持には重要であるが、スリット膜構造維持には、不可欠ではないことなどを明らかにしてきた。本年度(平成13年度)は、(1)5-1-6抗体認識エピトープの同定、(2)ネフリン発現低下と増殖性腎炎進展との関係についての解析、(3)ネフリン同様スリット膜の透過性制御に関与しているのではないかと考えられているポドシンの機能解析を行った。(1)5-1-6抗体は、ネフリンのextracellular site中央部の400アミノ酸からなる部位にあることをCOS cell expressionの系で確認した。この部位は、ネフリンの分子機能上極めて重要な部位であると考えられる。一連の検討結果はNephrology Dialysis Transplantation(in press)に発表した。(2)ネフリン発現が低下している群では、増殖性腎炎は増悪し、進行性の経過をたどることをラットモデルで明らかにした。この結果はKidney Int誌2001年12月号に報告した。(3)ポドシンのrat homologueのクローニングを行い、Gen bank登録した(AY039651)。ラット実験モデルでの検討で、蛋白尿発症時、ポドシンの発現が低下していることを明らかにした。一連の研究結果は、2001年10月米国サンフランシスコで開催された世界腎臓学会にて報告した。

研究成果

• [文献書誌] Morioka Y: "Podocyte injuries exacerbate mesangial proliferative glomerulonephrits"Kidney Int. 60. 2192-2204 (2001)
• [文献書誌] Ito Y: "Not the ED^1 but the ED^3 macrophage participants in the pathogenesis of irreversible glomerular changes"Acta Medica et Biologica. 49. 73-80 (2001)
• [文献書誌] Ostendorf T: "Specific antagonism of PDGF prevents renal scarring in experimental glomerulonephritis"J Am Soc Nephrol. 12. 909-918 (2001)
• [文献書誌] Fujigaki Y: "Sequence of events in the glomerular capillary wall at the onset of proteinuria in passive Heymann nephritis"Virchows Arch. 4388. 136-145 (2001)
• [文献書誌] Watanabe T: "Glomerular CD8^+ cells predict progression of childhood IgA nephropathy"Pediatr Nephrol. 16. 561-567 (2001)
• [文献書誌] Inoue T: "FAT is a component of glomerular slit diaphragms"Kidney Int. 59. 1003-1012 (2001)
• [文献書誌] Kasuga H: "Effects of anti-TGF-β type II receptor antibody on experimental glomerulonephritis"Kidney Int. 60. 1745-1755 (2001)
• [文献書誌] Ito Y: "Fractalkine Expression and the recruitment of CX3CR1+ cells in the irreversible mesangial proliferative glomerulonephritis"Kidney Int. (in press).
• [文献書誌] Kawachi H: "mAb 5-1-6 nephropathy and nephrin"Microsc Res Tech. (in press).
• [文献書誌] Ikezumi Y: "FK506 ameliorates proteinuria and glomerular lesions induced by anti-Thy 1.1 monoclonal antibody 1-22-3"Kidney Int. (in press).
• [文献書誌] 河内 裕: "糸球体濾過障壁を構成する蛋白と機能"腎と透析. 50. 825-830 (2001)
• [文献書誌] 河内 裕: "腎糸球体足細胞足突起間スリット膜の構造と機能"医学のあゆみ. 198. 691-695 (2001)
• [文献書誌] 河内 裕: "Annual Review腎臓 2001"中外医学社. 251 (2001)
• [文献書誌] 河内 裕: "専門医のための腎臓病学"医学書院(印刷中).