これまでにOpposum腎臓由来近位尿細管細胞(OK細胞)を用い、ナトリウム依存性リン輸送担体の遺伝子発現機構および副甲状腺ホルモンによるリン輸送活性の低下について報告してきた。しかし、前記細胞は副甲状腺ホルモン受容体の発現が極めて低く、蛋白質レベルでのリン輸送担体調節機構を研究する上で限界があった。そこで、我々はリン輸送担体を遺伝子導入することにより簡便に検出することが可能な細胞系を確立し、それを用いて副甲状腺ホルモンによるリン輸送担体小胞輸送機構を解析することを試みた。 1.マウス近位尿細管細胞(MCT細胞)への、リン輸送担体遺伝子の導入 既知のリン輸送担体を持たないが、副甲状腺ホルモン受容体をもつMCT細胞に、ヒトナトリウム依存性リン輸送担体遺伝子を導入することにより、副甲状腺ホルモンでリン輸送担体はエンドサイトーシスを引き起こした。また、プロテインキナーゼAおよびCを活性化することでも同様な現象を確認することができた。更に、抗リン輸送担体抗体と共焦点レーザー顕微鏡で、リン輸送担体をトレースすることに成功した。 2.副甲状腺ホルモンによるリン輸送担体小胞輸送機構 リン輸送担体のN末端側へFLAGタグ、C末端側にmycタグを導入し、一過性発現させたMCT細胞株を作成した。この細胞株が副甲状腺ホルモン刺激で活性化されるリン酸化蛋白質を、抗FLAG抗体、抗myc抗体、そしてリン輸送担体C末端側に対する抗体を用いて免疫沈降法により検出した。この結果、副甲状腺ホルモン刺激により、リン輸送担体のC末端側に作用してエンドサイトーシスを引き起こすと思われるリン酸化蛋白質を検出することに成功した。
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