腎炎モデルの作製とリコンビナントVEGFによる糸球体傷害の修復 糸球体内皮細胞傷害を伴うヒトのメサンギウム増殖性腎炎のモデルとして、ラットThy1腎炎を作製し、糸球体病変を観察した。抗Thy1抗体を投与するとその24時間後にはメサンギウム細胞が融解し、その結果糸球体血管内皮細胞が破綻し毛細血管の融合がおきた。この結果は4日目に極期となり明らかな微小血管瘤と炎症細胞の浸潤を認めた。この後に残された構築を足場としてメサンギウム細胞、内皮細胞の増殖がおき糸球体の修復が進んだ。できる限りヒト腎炎の組織変化に近いものを作製するために、抗Thy1抗体の量を調節した。0.075-0.2mgの抗体を頚静脈から注入し、24時間後、4日後、18日後に腎組織の変化を観察した。0.075-0.1mgではメサンギウム細胞の変化は小なく、内皮細胞には殆ど変化が見られなかった。一方、0.2mgでは多数の係蹄の融合によってヒト腎炎では起こり得ないほどの強い糸球体の破壊が見られた。0.125-0.15mgでは糸球体血管の傷害は適度に見られたので、この条件を用いて実験を進めた。 ヒトリコンビナントVEGFを抗Thy1抗体投与時から4日間連日、10μgずつ静脈内に投与した。コントロールとしてBSAを投与した。VEGFの投与によってThy1腎炎による内皮細胞傷害は抑制され、続いておこる糸球体の修復は促進された。これらの実験で採取した腎組織を用いて、糸球体修復時の細胞の動態を解析中である。
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