研究概要 |
本年度は前年度に達成したSmadのmRNAおよびリン酸化Smadの測定系を用いて、培養腎メサンギウム細胞の伸展刺激系におけるTGF-betaの発現とその細胞外器質関連遺伝子への影響を検討した。伸展刺激下でメサンギウム細胞はTGF-beta遺伝子発現を伸展強度依存性、時間依存性に増加させるが、このとき抑制性Smad6,Smad7の遺伝子発現は不変もしくは減少することを見いだした。これは静的培養条件下で同細胞に外因性TGF-betaを作用させたときにみられる抑制性Smad6,Smad7の遺伝子発現増加とは著しく異なり、抑制性SmadによるNegative Feedbackが伸展刺激下では減弱していることを示唆する所見である。実際、伸展刺激下ではメサンギウム細胞は時間依存性に内因性TGF-betaの発現増加を介してCollagen type I,Fibronectineなどの細胞外器質遺伝子を増加させるのに対して、静的培養条件下での外因性TGF-betaの連続投与に対しても抑制性Smadの発現増加によるNegative Feedbackにより、細胞外基質遺伝子の発現は一時増加した後に抑制されることを見いだし米国腎臓学会で発表した。さらにSmad1およびSmad2のリン酸化は伸展刺激下で増加していることから、細胞外基質遺伝子の発現増加にはSmadを介した細胞内シグナルの関与が強く示差された。
|