研究概要 |
IgA腎症はIgA1が腎糸球体内に優位に沈着することを特徴とする疾患だが、我々は従来、IgA1分子が血清蛋白として例外的にそのヒンジ部にO結合型糖鎖を持つ事に注目し、IgA腎症の成因にこのO結合型糖鎖が関与している可能性を想定してきた。本年度は本助成で、本症糸球体沈着IgA1の糖鎖構造を詳細に解析し、この沈着IgA1のヒンジ部O結合型糖鎖が高度に糖鎖不全の状態であることを明らかにして報告できた(Kidney Int. 59:1077-85,2001)。 さらに糸球体沈着IgA1の由来として扁桃リンパ球産生IgAヒンジ部の糖鎖構造を検討した。扁桃摘出術を受けた本症患者より得た扁桃細胞を1週間培養し産生されたIgA1をaffinity chromatographyで分離後、ヒンジ部をJacalin columnにて単離し、その糖鎖構造をMALDO-TOFMSを用い詳細に検討した。その結果、本症患者IgA1でシアル酸、ガラクトースの欠損したアシアロ・アガラクトIgA1の増加している頻度が本症患者で増加していた(IgA腎症患者、n=7, 陽性率57.1%vs慢性扁桃炎患者、n=5,0%)。本研究は本年の日本腎臓学会で報告し、英文誌に投稿中である。 また、糸球体沈着性糖鎖不全IgA1のメサンギウム細胞の障害性を検討する目的で、酵素処理により人工的に作成した糖鎖不全IgA1を培養ヒトメサンギウム細胞に添加し、発現する遺伝子をcDNA arrayにて包括的に解析したところ、糖鎖不全IgA1固有の生理活性が示唆される結果がpilot studyで得られ、今後さらに検討する予定である。
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