IgA腎症はIgA1が腎糸球体メサンギウム領域に優位に沈着することを特徴とする。我々はIgA1が血清蛋白として例外的にそのヒンジ部にO結合型糖鎖を持つ事に注目し、IgA腎症の成因にこのO結合型糖鎖が関与する可能性を想定して検討し、本助成で本症患者血清および糸球体沈着IgA1のヒンジ部O結合型糖鎖が糖鎖不全の状態であることを明らかにしてきた。 本年度は糸球体沈着IgAの由来として扁桃に注目し、扁桃リンパ球産生IgA1ヒンジ部の糖鎖構造を検討した。扁桃摘出術を受けた本症患者より得た扁桃細胞を培養し、産生されたIgA1を分離後、ヒンジ部を単離し、その糖鎖構造をMALDI-TOFMSを用い詳細に検討した。その結果、本症患者IgA1でシアル酸、ガラクトースの欠損したアシアロ・アガラクトIgA1の増加している頻度が本症患者で増加していた(Nephrology 2002;A93)。また、O結合型糖鎖の基始部のGaINAcの結合部位の数と位置を変えた合成ヒンジ糖ペプチドを作成し、それに対する血清抗体価を検討したところ健常者に比べ本症患者で優位に高かった。さらに患者間で性差がみられ女性を示した(Nephr ology 2002;A91)。性差の意味は不明だが、一般に女性の予後は男性より良好とされ、この抗体は糖鎖不全IgA1の除去といった本症進展に抑制的に働いていることも推測された。 以上、本年度の検討で、本症患者血清及び糸球体沈着IgA1で増加している糖鎖不全IgA1は少なくとも一部の患者では扁桃由来であり、糖鎖不全IgA1に対する抗体が存在することを明らかにした。
|