研究概要 |
IgA腎症でIgA1ヒンジ部O結合型糖鎖が関与するかを検討し、本補助金で以下の点を明らかにした。 1,本症患者のIgA1ヒンジ部の構造解析。 (1)血清IgA1ヒンジ部O結合型糖鎖の糖鎖不全が本症で増加していることを証明した。(平成12年度) 2,糖鎖不全IgA1の糸球体沈着性。 (1)糖鎖不全IgA1は自己凝集しやすいことを観察した。(平成11年度) (2)本症患者血清IgA1を分画し、ラットに投与したところ。糖鎖不全IgA1が選択的に腎糸球体に沈着した。(平成11年度)さらに酵素処理で人工的糖鎖不全IgA1を作成してラットに投与したところ糸球体沈着、炎症細胞浸潤を惹起した。(平成14年度) (3)本症糸球体沈着IgA1の糖鎖構造を解析し、高度に糖鎖不全であることを観察した。(平成13年度) (4)糖鎖不全IgA1はIgGや補体成分C3に親和性を持つことを観察した。(平成14年度) (5)O結合型糖鎖の構造の異なる合成ヒンジ糖ペプチドを作成し、それに対する血清抗体価を検討したところ健常者に比べ本症患者で優位に高かった。(平成11,14年度) 3,本症における糖鎖不全IgA1の由来とその糸球体障害性。 (1)扁桃リンパ球産生IgA1ヒンジ部の糖鎖構造を検討した結果、本症患者IgA1で糖鎖不全IgA1の増加している頻度が増加していた。(平成14年度) (2)酵素処理で人工的に作成した糖鎖不全IgA1によるメサンギウム細胞の遺伝子発現変化をcDNA arrayで行い、メサンギウム細胞固有の発現パターンが観察し本症のIgA1沈着による組織障害機序解明への有効性が示された。(平成14年度) 以上、本助成による検討で、糖鎖不全IgA1がIgA腎症の発症進展に関与しており、そのIgA1が上気道由来の可能性が示唆された。
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