研究概要 |
セファロリジン(CER)による腎障害における有機アニオントランスポーター(OAT)の役割をOATの安定発現近位尿細管細胞を作出して解析した。(1)CERを始めとする種々のセファロスポリン系抗生物質のラットOAT1(rOAT1)安定発現細胞での有機アニオン輸送に対する影響と細胞生存率に対する影響の両者に有意の相関を認めた。すなわちセファロスポリン系抗生物質の腎障害性にrOAT1が重要な役割を果たすことが示唆された。(2)ラットOAT3(rOAT3)の安定発現細胞を用いて,rOAT3がCER輸送および腎障害性に関与することを明らかにした。すなわちrOAT3の安定発現細胞はCERの取り込み活性を示した。またCREの添加により時間および濃度に依存した生存率の低下を示し、その低下はOATの阻害剤であるプロベネシドにより抑制された。さらにrOAT1とrOAT3とでは種々のセファロスポリン系抗生物質に対する基質認識は相異なっていた。(3)CERと同様にOATを介して細胞内に取り込まれ腎障害を発症するオクラトキシン(OTA)の輸送および腎障害性についてヒトOAT1(hOAT1)およびヒトOAT3(hOAT3)の安定発現細胞を用いて検討した。hOAT1およびhOAT3はOTAを高親和性に輸送した。OTAによりhOAT1,hOAT3の安定発現細胞共に時間および濃度依存的に生存率の低下を示し、それはプロべネシドにより抑制された。種々の基質によるOTA輸送の制御はhOAT1とhOAT3とでは相異なっていた。この結果は今後解析予定のhOAT1,hOAT3の安定発現細胞を用いたCER輸送および腎障害性と併せて,CERの特異性の明確にすると考えられる。
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