近年Fcレセプター(FcR)が糸球体腎炎の発症機構において重要な働きをしていることが明らかになり、IgA腎症においてはFcαRの役割が注目されている。IgA腎症はメサンギウム領域を病変の主座としていることより、従来から糸球体メサンギウム細胞(MC)におけるFcαRについて多くの議論が行われてきた。我々も今までに培養MCにおけるFcαRの発現について解析を重ねてきたが、その詳細な機能については不明な部分が多かった。当該粘度において、まず最初にMCにおけるFcαRの果たす役割を解析した。マウスメサンギウム細胞株にFcαRおよびそのシグナル伝達分子であるFcRγ鎖を遺伝子導入し、その機能解析を行った。その結果、この両者を強制発現させたMCのみが細胞内シグナル伝達のカスケードを動かし、さらにMCP-1の産生も亢進させることが判明した。この結果を踏まえ、同様の系を初代培養MCに導入し、更にはIgA腎症モデルを作成すべくin vivoへと展開する予定であったが、安定した導入条件を決定することができなかったため、IgA腎症におけるFcαRの発現制御について検討することとした。本疾患とFcαRの関係はその発現の特殊性について報告が散見され、単離糸球体、メサンギウム細胞、末梢血好中球、単球などに正常対象者との違いが報告されている。今回その発現制御を解析する過程で、FcαRのプロモーター領域に2箇所の遺伝子多型をを新たに同定し、IgA腎症における頻度とその意義について検討した。その結果、IgA腎症患者においては正常対象者あるいは他の原発性糸球体腎炎患者と比べてこの部位の遺伝子多型の分布に特異的な偏りがあることが判明した。この2箇所の遺伝子多型はいづれもプロモーター活性にも影響を与えることより、本疾患におけるFcαRの発現制御に遺伝的な背景が関与している可能性が示唆された。
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