平成11年度は、1)ラット腎炎モデルでの糸球体硬化病変とcathepsinLの糸球体内分布の免疫病理組織学的検討と、2)培養糸球体上皮細胞を用いた、各種サイトカインのcathepsinLの発現に及ぼす影響ならびに細胞外への放出を検討した。 腎炎モデルでの免疫病理組織学的検討からは、1)cathepsinLの発現がおおよそ硬化部位に一致して見られること、2)細胞レベルでは糸球体上皮細胞とボウマン嚢上皮細胞に発現すること、3)cathepsinLの内因性阻害物質であるcystatin betaはボウマン嚢上皮細胞のみに発現し、糸球体上皮細胞では認められないことを見いだした。これらの結果から糸球体硬化の進行にかかわる糸球体上皮細胞障害に、cathepsinLが関与している可能性が示唆された。 次にcathepsinLの糸球体上皮細胞障害の機序を明らかにする目的で、in vitroの実験を行った。同酵素は何らかの刺激で誘導されると、細胞外に放出され細胞外基質を分解することが知られている。そこで糸球体上皮細胞を障害し、糸球体硬化を起こすことが知られているbasicFGFを中心に、1)各種サイトカインの刺激で培養糸球体上皮細胞にcathepsinLが誘導されるか、さらに2)細胞外への同酵素の放出が起きるかの2点をwestern blottingで検討した。結果として、1)basicFGFがPDGFなどに比べて有意にcathepsinLを誘導すること、2)細胞外にpro cathepsinLの放出を促すことが明らかになった。今後細胞内外でのcathepsinLが実際に蛋白分解作用を示しているか否かを明らかにしてゆく予定である。
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