本研究の日的は、腎疾患の進行においてもっとも重要な病変である間質の線維化の進展過程におけるmyofibroblastの動態を、組織極性を司るfrizzled遺伝子発現から検討することにある。本年度において、まず尿細管、間質病変と引き続く間質の線維化の実験モデルとして一側尿管結紮ラットを作成し、間質の線維化の経時的な進行程度を組織学的に評価した。次に抗α平滑筋アクチン(αSMA)抗体を用いた免疫組織化学によって、myofibroblast(αSMA陽性)の間質における局存の変化を検討した。これらによって一側尿管結紮ラットの間質の線維化の進行においてmyofibroblastが重要な役割を演じていることを明らかにしえた。Myofibroblastにおけるfrizzled遺伝子発現はin situ hybridization(ISH)によって検討した。ISHはoligo probeを用いて施行している。25-50merのoligo probeを数種、設計し、標識はビオチン標識、ジゴキシゲニン標識の二通りの方法を行い検討した。現在、間質にISHによってfrizzled mRNA陽性細胞の検出に成功し、連続切片での検討によって免疫組織化学によるαSMA陽性細胞と同一であることを証明しえた。間質の線維化の進行に伴いfrizzled mRNA陽性のmyofibroblastの動態、局在がどのように変化するのかを解析中である。この解析終了後、ヒト腎生検組織においての同様な検討を行うとともに、一側尿管結紮ラットの間質の線維化組織からmyofibroblastを分離しfrizzled遺伝子の変異の有無の検討を次年度中に施行予定である。
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