研究概要 |
グルココルチコイド分子作用は、リガンドと結合した受容体が核内に移行し転写調節を行うことによる。ステロイド感受性低下症例では受容体核内移行が低下することが予想される。そこで、標識受容体を患者リンパ球に導入しグルココルチコイド刺激による核移行を解析する。この目的のためにすでに作成しているGCR融合Green Fluorescent Protein(GFP)発現ベクターを動物細胞に遺伝子導入しその核移行を解析した。本研究ではこのGCR-GFP発現ベクターを健常者およびグルココルチコイド感受性の異なる小児ネフローゼ症候群患者末梢血単核球に導入し、GCR(蛍光蛋白として発現)の核移動によりステロイド作用を定量し患者個人のグルココルチコイド感受性を測定した。 グルココルチコイド受容体四次構造を規定する細胞内蛋白の解明。 GCRの四次構造は、熱ショック蛋白(hsp90,hsp70,hsp27)、イムノフィリン(cyclophilin40,FKBP52)、p56などとの相互作用(会合)により保たれている。これらの蛋白の発現異常が、GCRのリガンドとの結合、核移行を阻害する可能性が考えられる。そこで健常者およびグルココルチコイド感受性の異なる小児ネフローゼ症候群患者末梢血単核球におけるこれらの蛋白発現と臨床所見、腎組織学的分類について解析した。 グルココルチコイド受容体機能を抑制する転写因子の解明。 GCRは他の転写因子とも相互作用し、互いの転写活性を制御する。GCRと相互作用を持つ転写因子としてFOS/JUN,NF-kBが知られている。本研究においては健常者およびグルココルチコイド感受性の異なる小児ネフローゼ症候群患者末梢血単核球を用いて、これらの蛋白の発現、導入GCR(前述のGCR-GFP)との相互作用を、イメージ解析および表面プラズモン共鳴解析(IAsys)により解析した。
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