研究概要 |
[目的] 糖尿病性腎症の発症に対するレニン・アンギオテンシン系とプロテインキナーゼC(以下PKC)の関連を明らかにすることを目的とし,本年度は糖尿病ラットを用いたin vivoの検討を行った. [方法] Splaegu-Dawleyラットをストレプトゾトシン60mg/kgの腹腔内投与によって糖尿病とし,2〜4週間飼育,腎を摘出し,sieving法によって糸球体を単離した.一部の糖尿病ラットでは,インスリンペレットの皮下植え込みにより,正常血糖とした.単離糸球体のPKC活性は,PKC特異的な基質を用いたin situ phosphorylation法により測定した.PKCアイソフォームは,単離糸球体を超遠心法によって細胞質分画と膜分画に分離,各アイソフォームに対する特異的モノクローナル抗体を用いたイッムノブロットを行い,特に膜分画の増加を検出した. [結果] 糖尿病ラットでは,正常ラットに比べin situ PKC活性が有意に更新しており,この変化は糖尿病ラットをインスリン治療によってほぼ正常の血糖を維持することによって消失した.アイソフォームの検索では,糖尿病ラット腎糸球体の膜分画で,α,δ,εの各アイソフォームが増加しており,これらの変化もインスリン治療によって正常化した. [結論および来年度の課題] これまでに報告されている糖尿病ラット腎糸球体におけるPKC活性の増加に関しては,今回われわれも確認したが,膜分画で増加しているアイソフォームは異なっていた. 今後これらPKCの変化に対するアンギオテンシンの影響について,細胞培養系を用いたin vitroの系で検討する予定である.
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