研究課題/領域番号 |
11671059
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
清水 章 日本医科大学, 医学部, 講師 (00256942)
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研究分担者 |
石崎 正通 日本医科大学, 医学部, 助教授 (40096954)
益田 幸成 日本医科大学, 医学部, 助手 (70173755)
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キーワード | 腎移植 / 免疫寛容 / 急性拒絶反応 / 慢性拒絶反応 / 傍尿細管毛細血管 / 間質線維化 / 糸球体硬化 / 移植糸球体症 |
研究概要 |
免疫抑制剤の生命やQOLに関わる重篤な副作用の問題から、腎臓移植の分野においても免疫抑制剤の使用用量や使用法の検討が続けられている。私たちは、免疫抑制剤を長期に使用することなく移植臓器を生着させることを目的に、recipientにdonor特異的な免疫寛容を導入する方法、その機序や免疫寛容の導入が失敗に終わった場合の移植臓器の特徴について解析をしている。今年度は、実験動物を用いて行われた腎移植において、免疫寛容の導入が不完全な症例は、慢性拒絶反応に陥ることを利用し、移植腎の晩期廃絶に関わる原因として問題となっている、慢性拒絶反応の進展過程の特徴を病理学的に検討した。免疫寛容は導入されるものの、その導入に時間がかかった場合や、安定した導入が成し得なかった場合は、軽度から中等度の急性拒絶反応が持続し、次第に慢性拒絶反応へと進展し、移植腎は廃絶された。慢性拒絶反応の進展過程には、間質の線維化が大きく関わっており、免疫学的機序による傍尿細管毛細血管炎にともなう内皮細胞傷害や尿細管炎による尿細管上皮細胞傷害や尿細管基底膜の断裂が関与していることを明らかにした。さらに、慢性拒絶反応に特徴的な糸球体変化として知られる移植糸球体症は、細胞性免疫ならびに液性免疫機序による持続する糸球体毛細血管内皮細胞の傷害により発症し、その後の糸球体毛細血管網の破壊や、メサンギウム細胞の活性化や増殖が、移植糸球体症や糸球体硬化の進展に関連していることを明らかにした。移植腎における糸球体毛細血管網や傍尿細管毛細血管網などの腎微小血管系の傷害や尿細管の傷害は、移植腎機能を、直接的に、また移植糸球体症や間質線維化を介して間接的に低下させることから、免疫学的な傷害から腎微小血管や尿細管を保護することが、慢性拒絶反応における移植腎機能の保持には大変重要であることを明らかにした。
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