研究概要 |
糸球体腎炎では、糸球体に浸潤しているマクロフアージ(M)が、その進展過程に重要な役割を演じているものと考えられている。本研究の目的は、このMの糸球体への遊走機構を解明することであり、その手段としてアデノウイルスによるmacrophage migration inhibitory factor(MIF)遺伝子導入法を用いた。 【結果】1、in vitroでのMIF発現:MIF組み換えadenovirus vector(Ax1CAhMIF)を感染させた培養メサンギウム細胞では、免疫染色法にて細胞質にMIFが染色された。ELISAで測定した培養上清中の分泌MIFは、48時間でピークに達し14日間分泌が持続した。以上よりAx1CAhMIF感染細胞が、ヒトMIFを産生することが確認された。2、in vivoでのMIF産生:大腿筋肉にAx1CAhMIFを注射し、経時的に血清MIFをELISAで測定した。注射2日日で血清MIF濃度はピークに達し、4日目から急激に減少した。以上から3-4日間と短期間であるが、MIFの血中濃度を維持できることが確認された。3、抗GBM抗体型腎炎おけるMIFの影響:腎炎惹起の24時間前にAx1CAhMIFを筋肉内投与することにより、尿蛋白排泄量は減少し、組織学的にも半月体形成、M浸潤はコントロールに比し軽度であった。糸球体におけるMCP-1,TGF-βのmRNA発現量も減少していた。【結論】Mの遊走抑制因子で、かつ組織局所ではMの活性化因子でもあるMIFを病初期から血中に強制発現させると、腎炎の進展が抑制された。これはMIFによるMの遊走制御機構の存在を推測させるものであり、今後はMIFのMに対するspreading抑制効果や、migration抑制効果などの生理活性を確認する予定である。
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