糸球体腎炎の進展過程においては、糸球体に浸潤したマクロファージが重要な役割を演じているものと考えられている。M遊走阻止因子(MIF)はこのマクロファージの遊走抑制因子で、かつマクロファージの活性化因子でもある。11年度研究では、組換えアデノウイルスを用いて腎炎の病初期からMIFを血中に強制発現させた。その結果、MIFの遺伝子導入により糸球体腎炎の進展が抑制されることが判明した。これはMIFにより流血中マクロファージの腎局所への遊走が抑制されたことを示唆している。 一方生理的にはMIFは脳や腎臓で多量に発現しており、特に腎尿細管細胞内に多量貯蔵されている。これは虚血などの環境の変化に応じて放出されるものと推測される。12年度の研究では、このような酸化ストレスに対する腎の反応様式を、MIFの発現経過から検討した。H2O2による酸化ストレス下の培養メサンギウム細胞は、刺激直後に細胞内に貯蔵されていたMIFが培養液中に放出された。これは新たな転写、翻訳による蛋白合成が必要である、炎症性サイトカインのTNF刺激によるMIFの放出機序とは異なるものであった。またラット腎動脈の虚血再潅流による腎の酸化ストレスでは尿細管細胞のMIF染色性が著明に低下していると同時に、血清MIFが上昇しており、虚血刺激による尿細管細胞の貯蔵MIFの放出が示唆された。臨床的には、腎尿細管間質障害を伴う移植腎拒絶反応やIgA腎症では血清MIF値が病変の活動性と並行して推移していた。以上の結果より、その生理的意義は未だ不明であるが、血清MIF測定は治療効果の判定に役立つものと期待される。
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