研究概要 |
リポ蛋白糸球体症は、日本で新たに発見された腎疾患で、III型高脂血症に加えて蛋白尿、腎機能障害を引き起こし、病理組織学的に糸球体内にアポEを含むリポ蛋白血栓症を特徴とする疾患であるが原因は不明であった。リポ蛋白糸球体症の独立した3家系を調べた結果、全ての症例でアポE変異体、アポE2(Arg145Pro)Sendaiを発見。続いてこのリポ蛋白糸球体症と密接に関係するアポ蛋白E変異体、アポE2Kyoto(Arg25Cys)、アポE1(del141-143)、アポE1(del156-173)の3種を発見した。さらにアポE変異とリポ蛋白糸球体症の関連及び発症機序を解明するため、リポ蛋白糸球体症のモデル動物としてアポE1(del141-143)トランスジェニックマウスの作製を行った。プロモータ部位を含む正常ヒトアポE遺伝子(11.5kb)に、アポE1(del141-143)変異をsite directed mutagenesisを用いて導入。全配列を確認し、変異導入アポE遺伝子を制限酵素HindIIIで切断し、直線鎖DNAとして精製。共同研究にて、熊本大学動物資源開発研究センターに輸送し、単離直線化アポE遺伝子をミクロマニピュレーターにより受精卵の前核に注入し、偽妊娠仮親C57BL/6雌マウスの卵管に移植した。しかし、同センターで病原ウイルス感染に遭遇し、初回に得られたマウスは屠殺された。2回目の作製にて7匹のマウスが得られ、スクリーニングを行ったところ、雌1匹でヒトアポE遺伝子を確認した。その後繁殖を試みているが、F1マウスでのヒトアポE遺伝子発現率が低く,現在までに雄2匹で発現を認めたのみであり、さらに繁殖を行っている。今後、アポE1(del141-143)変異ホモ接合体マウスを確立し、血清リポ蛋白分析、糸球体病変の解析を行う予定である。
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