研究概要 |
〈目的〉慢性腎不全の進展において腎糸球体高血圧の関与が明らかにされている。メサンギウム細胞(MC)は糸球体高血圧状態において圧力負荷と伸展負荷を受けていると考えられる。既に申請者は、圧力負荷によりprotein kinaseCやtyrosine kinaseを介してMCが増殖すること、またその機序にPDGFが関与していることを報告した(Am.J.Physiol.277:F105-F112,1999;平成9、10年度科学研究費実績報告済)。近年、腎不全の進展にケモカインの関与が示唆されている。今回、圧力負荷の培養ラットMCにおけるMCP-1発現に及ぼす効果及びその機序について検討した。〈方法〉開発済の圧力負荷装置を用い、MC(5〜9代)に圧を加え以下の検討を行った。1、圧力負荷によりMCP-1 mRNAの発現に対する時間及び圧力依存性の検討(RT-PCR法)2、圧負荷による培養上清中へのMCP-1分泌の定量(ELISAキット)3、種々のキナーゼ阻害剤を用いたMCP-1mRNAの発現機序の検討(RT-PCR法)4、MAPキナーゼtransfectionによるMCP-1mRNA発現の検討(RT-PCR法)〈結果〉1、80mmHgの圧力負荷にて5分後よりMCP-1mRNAは発現し、10分にてピークを認め30分にて基礎値に復した。圧力(〜80mmHg)依存性にMCP-1mRNAの発現は増加した。2、80mmHg、10分の圧力負荷後24時間にて培養上清中のMCP-1蛋白は有意に増加した。3、MAPキナーゼ及びプロテインキナーゼCの両阻害剤にてMCP-1の発現は有意に抑制された。4、constitutively activated MEKをtransfectionしたMCでは、圧力負荷の無い条件下においても有意にMCP-1の発現を認めた。一方、domonant negative MEKをMCにtransfectionすると圧力負荷時においても有意にMCP-1の発現は減弱した。〈考察〉MCへの圧力負荷によりMAPキナーゼを介したMCP-1の発現及び分泌を認め、腎不全の進展に関与している可能性が示唆された。
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