1.新生仔豚による低酸素性肺高血圧症モデルの作製 0生日の新生仔豚に対して全身麻酔下で気管切開による気管内挿管を行なった後、筋弛緩剤を使用し人工換気を行う。その後、右内頚静脈よりバルーンカテーテルを挿入し、X線透視下で先端を肺動脈内へ留置し、肺動脈圧を連続モニターする。また、臍動脈よりカテーテルを挿入し、先端を下行大動脈へ留置し、体血圧を連続モニターする。窒素混合ガスを用いて5-10%酸素の低酸素負荷による肺高血圧症を作製した。 2.新生仔豚に対するNO吸入の効果と安全性に関する実験 (1)NO吸入による選択的肺血管拡張作用に関する実験 低酸素性肺高血圧症モデルにおいて、NO吸入直後より肺動脈圧は前値に比較して約30%低下したが、体血圧は変化しなかった。 (2)吸入NO濃度に関する実験 低酸素性肺高血圧症モデルに対して1ppmから10ppm(1ppm毎増加)、20、30、40、50ppmのNO濃度でNO吸入を行った時、肺動脈圧は1ppmから5ppmまでは濃度依存性に低下したが、5ppm以上では肺動脈圧の低下率に差は認めなかった。 (3)NO吸入の副作用に関する実験 ・No吸入中の血中メトヘモグロビン(MetHb)濃度について 20ppmNOと100%酸素を6時間吸入させた時の血中メトヘモグロビン濃度を定期的に計測したが、吸入開始後30分から60分で1%前後に増加したが、その後は有意な変化は無かった。 ・吸入NO濃度と吸入NO2濃度との相関について 20ppmNOを100%酸素下と21%酸素下で吸入させた場合、100%酸素下の方が、NO2の産生量が高値を示した。次に、吸入NO濃度を変化させた時のNO2産生量を100%酸素下と21%酸素下で比較した結果、NO濃度が高値になるにつれて、100%酸素下でのNO2産生量が急激に増加することがわかった。
|