研究課題
血管のトーヌスは静止膜電位に依存するが、その膜電位は主にカリウム(K)チャネルによって制御されている.酵素による動脈管の扱縮機序のひとつとして、低酵素は動脈管のKチャネルを開き、膜を過分極させ動脈管を弛暖させる、酵素はKチャネルを閉じ膜を脱分極させ、Caチャネルを開き細胞外から内へのCa流入を増加させ収縮をおこすことが分かった.本研究ではまた動脈管平滑筋Kチャネルの特徴を調べるとともに、動脈管に発現し、他の組織に発現しないKチャネルの発現に努めた.1)動脈管平滑筋Kチャネル:胎生29日の胎仔家兎から動脈管平滑筋細胞を単離し、Kチャネルの電気生理学的研究を行った.電位固定パッチクランプ法にてK電流を測定した.動脈管には酵素にて閉じ、低酸素にて開口するK電流が存在することが分かった.それと同時に、ATP感受性K電流も、動脈管には、肺動脈に比して多いことが分かった.低酵素でATPが低い状態ではKチャネルが開き、動脈管は弛暖すると推測される.2)動脈管Kチャネルの遺伝子発現:家兎動脈管から単離したmRNAの動脈管における発現量と、他の血管(大動脈、肺動脈)での発現量を、RT-PCR法にて比較した.酵素にて開口するKチャネルであるKV2.1とKV9.3の発現は、肺動脈に比し動脈管で少ないことが分かった.Differ ential display法で、肺動脈と大動脈、動脈管に発現する遺伝子を比較する方法を確立した.現在、動脈管にのみ発現する遺伝子の単離を進めている.