妊娠マウスを6.5日目にレチノイン酸処理することにより右側相同・ループ異常及び房室弁異形成が約30%に誘発される。これらには一側心室低形成がしばしば合併する。このような胚子では、心室中隔と房室弁の整列異常により、一側心室への流入口が狭くなる。典型例では房室弁弁葉は三葉となる(正常ではmajor lobcとminor lobeがそれぞれ一対形成される)。今回レチノイン酸処理マウス胚子における心室運動を観察し、面積の連続的測定の後形態学的観察を行った。一側心室低形成は、特徴的房室弁形態異常と流入障害と関連することがわかった。カテゴリーAに属する胚子のうち、一例は一側心室の流入遅延のみを示し、5例では一側心室低形成と流入遅延を示した。従って、流入遅延が心室低形成に先立つことが示唆された。ヒトの無脾症候群における心室低形成においてもこのようなメカニズムが働いている可能性が考えられる。次に、レチノイン酸処理マウス胚子体節期におけるnodal/lefty遺伝子の発現をin situ hyridizationにより検索した。両遺伝子ともに、正常では左側に連続的に発現するのに対し、左及び/または右において点状〜モザイク・パターンを伴って発現した。また発現の時期も様々で一定しなかった。また、静脈洞領域におけるこれらの遺伝子の発現は正常に比し著明に減弱していた。以上より、レチノイン酸誘発心奇形は遺伝子発現の異常血行動態的異常により発生することがわかった。
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