我々は、ラット胎仔大脳皮質ニューロンをアストロサイト上に培養し、シナプス形成によるニューロンの同調活動を観察することにより、大脳皮質神経回路網の機能的発達モデルの確立をめざして研究している。今年度は、この同調活動にはG1utamate のみならずGABA性ニューロンも同調発火していること、細胞内外のCl^-濃度が回路網の発火性に強く関与していることを明らかにし、我々のモデル系はin vivoの大脳皮質局所回路に似た性質をもつことを明らかにした(Brain Res.in press)。大脳皮質IV層ニューロンが誕生する胎生17日目にX線照射したラット(E17照射ラット)を用いて、IV層ニューロンを欠く系においても同様の同調活動がみられるかどうかを観察した。まずE17照射ラットでは、すでに報告されているように、大脳皮質IV層ニューロンが消失し、小頭症になることを確認した。また、E17照射ラットから胎生18日目(E18;X線照射の翌日)に大脳皮質ニューロンをとりだしたところ、ニューロン数は健常ラットに比較して約1/4に減少していた。このニューロンを健常アストロサイト上に培養したところ、健常ラットと同様のシナプス連絡によるニューロンの同調活動が観察された。このことは、E17照射ラットニューロンにおいても、ニューロンの密度が変わらなければシナプス形成が可能なことを示している。さらに、同調活動あるい照射ラットニューロンの性質を細かく解析し、出生後、行動過敏を示すE17照射ラットの本態を解明し、神経回路網発達に影響を与える因子について検討していく予定である。
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