1、神経構築異常の観察(形態学的検討) TRHノックアウトマウスにおける小脳、corpus callossumを中心としてミエリンの形成、層構造、細胞の異所性変化などを検討したが異常は認められなかった。 2、TRHノックアウトマウスにおける行動学的異常 TRHノックアウトマウスの運動量、日周リズムは、野生型と比較して障害はなかった。受動的回避試験、高架十字迷路、アンビュロドリンコメーターなどの検討で、新環境たいして恐怖反応が強いことが明らかとなった。さらにエタノールの投与による酩酊時間(正立反射の消失)が、野生型と比較して約2倍に延長し、エタノールへの感受性が亢進していることも明らかとなった。 3、cDNAサブトラクション法による未知TRH制御遺伝子の同定 野生型マウス海馬、小脳のmRNAよりTRHノックアウトマウスmRNAを差し引いたサブトラクションcDNAライブラリーを作製し、PCR法を用いてTRHノックアウトマウスにて変化しているmRNA群を同定し塩基配列を決定した。100クローン以上解析し、神経細胞に特異的なCdk2 related kinaseがTRHによって制御されていることが判明した。また、この事実を確認するため、小脳Medulloblastoma細胞株において、TRHの処理によりこのCdk2 related kinase mRNAが用量依存的、時間依存的に増加することが確認された。
|