1.カルシウム感知受容体(Calcium-sensing receptor:CaSR)に対する抗体の検討自己免疫性疾患を合併する特発性副甲状腺機能低下症患者血中に、CaSRに対する抗体が存在する場合があることが報告された。そこでCaSRを恒常的に発現するHEK細胞細胞膜分画を用いてWestern blot解析を行うことにより、副甲状腺機能低下症患者血清中にCaSRに対する抗体が存在するかどうかを検討した。しかし8例の特発性副甲状腺機能低下症患者における検討では、抗体の存在は確認できなかった。従ってCaSRに対する抗体は、特発性副甲状腺機能低下症の、少なくとも主要な病因ではないものと考えられた。 2.各種癌細胞におけるCaSR発現の検討 我々はヒトCaSR遺伝子プロモーター領域のクローニングの過程で、ヒト乳癌細胞でCaSR遺伝子プロモーター活性が検討できることを見いだした。このことは乳癌細胞がCaSRを発現していることを示唆している。そこでNorthern blotおよびWestern blot解析によりCaSRの発現を検討し、ヒト乳癌細胞であるMCF7細胞、およびMDA-MB-231細胞に発現が認められることを確認した。また細胞外Ca濃度の上昇によりこれらの細胞の細胞内Ca濃度が上昇すること、MCF7細胞からの副甲状腺ホルモン関連蛋白分泌が亢進することも明らかとなった。このようなCaSRを介する副甲状腺ホルモン関連蛋白の分泌増加は、特に悪性腫瘍に伴う高Ca血症の病態をより悪化させる可能性が考えられた。
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