1.カルシウム感知受容体(Calcium-sensing receptor : CaSR)変異の検討 CaSRの不活性型変異により家族性低Ca尿性高Ca血症(familial hypocalciuric hypercalcemia : FHH)や新生児重度副甲状腺機能亢進症(neonatal severe hyperparathyroidism : NSHPT)が、逆に活性型変異により常染色体優性低Ca血症(autosomal dominant hypocalcemia : ADH)が惹起されることが明らかにされた。この内FHHはCaSR不活性型変異のヘテロ接合体、NSHPTはホモ接合体であり、一般にNSHPT患者は新生児期に副甲状腺切除を行わないと致死的と考えられてきた。我々は自験例の検討から、新規CaSR変異を同定すると共に、CaSR不活性型のホモ接合体であっても、変異受容体機能異常が軽度な例では無治療で成人まで生存可能なことを明らかにした。さらにFHH患者は、原発性副甲状腺機能亢進症類似の病態を示すものの、その副甲状腺組織像は通常の副甲状腺過形成とは異なることを報告した。 2.CaSR遺伝子プロモーターのクローニング CaSRの変異に加え、その発現異常もCa代謝異常症の原因となる可能性が考えられる。そこで我々は、CaSR発現調節機序を明らかにする目的で、ゲノミッククローニングによりヒトCaSR遺伝子プロモーター領域をクローニングした。その結果、ヒトCaSR遺伝子は少なくとも二つのプロモーターと5'非翻訳エクソンを持ち、alternate splicingにより複数のmRNAを産生することが明らかとなった。さらに原発性副甲状腺機能亢進症惹起副甲状腺腺腫では、上流のプロモーターによって産生されるCaSR mRNAのみの発現が、正常副甲状腺に比較し低下していた。今後CaSR遺伝子プロモーター活性を調節する因子を明らかにしていくことが、Ca代謝異常症の病因の解明に必要と考えられる。
|