研究概要 |
平成11年度でははまず、ラットGH (rGH) 遺伝子転写開始点上流域ー1.7kpb 遺伝子配列(PGGB) にヒト GH (hGH) 遺伝子を接合したキメラ遺伝子を SD ラットに遺伝子導入し(宮崎医科大学組み替えDNA 実験計画承認番号72号)、PGGB・hGH-SD-Tg を作出・系統維持に成功した(片上秀喜、成長科学協会研究助成、平成9年度、Endocrine J 46:S75-80, 1999)。当初の予定通り、平成11年度の設備備品である簡易 UV ゲル撮影装置を活用し、hGH 遺伝子が下垂体のみに発現していることをRT-PCR で明らかにした。そして、ラット血中の hGH は思春期の growth spurt に伴い増加することが明らかとなった。さらに、無麻酔 Tg において、右心房内に慢性的に留置したカテーテルより経時的連続採血を行い、血中 hGH、 r GH ならびに rPRL を同時に測定したところ、雄 Tg では hGH と rGH が同期し、雄 Tg では hGH と rPRL 分泌が同期するという性差を認めた(投稿中)。つぎに、dr 雄ラット(dr+/+)と上述の PGGB・hGH-SD-Tg を交配飼育し、まず、PGGB・hGH-SD/drーTg ヘテロ接合体ラット(+/-)を作出した。さらに、dr (+/+) と再度交配し、PGGB・hGH-drーTg ホモ接合体ラット(+/+)を得、その継代・飼育に成功した。ヒト GH のみで対照ラットと同様の成長を示す PGGB・hGHーdrーTg が予定年度より早く作出・継代・維持できた。その解析も平成11年度に取りかかることが出来た(日本内分泌学会学術集会 1999 年抄録、成長科学協会平成10年度研究年報 22:419ー425,1999)。その結果、平成12年度で達成予定であった実験が可能となり、hGH のみで対照の SD ラットと同様の成長を示すことが明らかとなった(Endocrine J, in press)。また、ラット血中の hGH 分泌は対照 SD ラットの rGH と同様に、脈動的で、分泌に雌雄差を認めた。(第72回日本内分泌学会学術総会。横浜、#135、 1999)。研究遂行上に生じた学術上の問題点は、ヒト GH (hGH) はラットなどの齧歯類に対してプロラクチン作用を有し、妊孕性の低下が報告されているが、本 PGGB・hGH-drーTg では、妊孕性は保たれ、継代・飼育が可能である。持続的にラット血中 hGH 濃度を高くすると妊孕性が低下する。本 PGGB・hGH-drーTg での hGH 分泌が脈動性を示したことより、hGH の投与様式により、視床下部 Dopamin ・LHRH 神経細胞機能が大きく影響される可能性が示唆された(日本内分泌学会学術総会、京都、2000年、発表予定)。
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