DOCA食塩高血圧ラットでは、脳内のレニン、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)の遺伝子発現量は腎とは異なり抑制されておらず、AT1受容体mRNA量も腎に比べて脳で増加していた。即ち、DOCA食塩高血圧ラットでは、脳内レニン-アンジオテンシン系の遺伝子発現が腎に比べて脳で亢進していると予想され、DOCA食塩高血圧ラットの交感神経活動・AVP分泌亢進の一因であると考えられる。 DOCA食塩高血圧ラットにアミロライド感受性Naチャネルの特異的ブロッカーであるベンザミルを7日間脳室内投与すると高血圧の抑制、交感神経活動・AVP分泌の低下とともに、視床下部・下位脳幹部のレニン・ACE・AT1受容体mRNA量は有意に減少した。ベンザミルでブロックされる脳内のNaチャネルが、脳内のRASの遺伝子発現調節に関与し、末梢交感神経活動やAVP分泌などの中枢性昇圧機構に関与している可能性がある。また、興奮性脳ペプチドであるFMRFamideが、上皮性Na^+チャネルとは異なるアミロライド感受性Naチャネルを活性化することが報告されている。このNaチャネルは、脳に特異的に存在するとされている。FMRFamide脳室内前投与後0.9%NaCl等張食塩水を脳室内投与すると、血圧・心拍数・交感神経活動の亢進を認めた。また、脳室内にFMRFamideを5日間持続投与した時の血圧・心拍・尿中ノルエビネフリン・AVP排泄の増加反応は高塩食摂取下にて顕著であり、低塩食摂取下では減弱していた。FMRFamideにより活性化される脳内アミロイド感受性Na^+チャネルが食塩感受性高血圧に関係する脳内Naチャネルである可能性があり、現在詳細に検討中である。
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