近年、興奮性脳内ペプチドであるFMRFamideが、現在までに報告されている上皮性Na^+チャネルとは異なるアミロライド感受性Na^+チャネルを活性化する可能性がある。この新しいNa^+チャネルはベンザミルにより抑制され、他の末梢臓器に比べて脳に特異的に分布している。FMRFamideは脳室周囲・視床下部・脳幹部に多量に存在しており、ラットにおいてFMRFamideの脳室内投与が交感神経活動の亢進を伴う著明な昇圧作用を有するととは以前より報告されていたが、その昇圧機序は明らかではなかった。雄性Wistar系ラットを用いて、ウレタン麻酔下にFMRFamideを脳室内前投与後に0.9%生理食塩水を脳室内投与すると、平均動脈圧、心拍数、腹部交感神経活動の有意の増加反応を認め、バソプレシン分泌も有意に増加した。FMRFamide脳室内前投与によるこれらの増量反応は全てベンザミルまたはAT1受容体遮断薬であるCV-11974の同時脳室内投与により抑制された。また、FMRFamideを雄性wistar系ラット脳室内に5日間持続投与した結果、低塩投与下に比べて高塩投与下において平均血圧、心拍数、尿中バソプレシン、ノルエピネフリンの有意な増加を認め、ベンザミルの同時脳室内投与によりこれらの増量反応は全て抑制された。高塩下では雄性FMRFamide脳室内持続投与により、視床下部のレニン、ACE、AT1受容体mRNA量は増加し、ベンザミルの脳室内同時投与によりその増量反応は抑制された。以上より、FMRFamideにより活性化される脳内アミロライド感受性Naチャネルが食塩感受性高血圧モデルの脳内レニン-アンジオテンシ系遺伝子発現調節に関与している可能性がある。
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