対象は1990年の厚生省調査研究班神経性食欲不振症のの診断基準を満たす女性患者15名で、同疾患の家族内発症を有する。心身症や精神疾患の既往がなく、調査の限りでは神経性食欲不振症の家族歴のない30才以上の健康女性10名を対照とした。ヘパリン加末梢血液からシュクロース勾配法にて白血球を分離し、ゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAを21種類の制限酵素で消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動後、ヒトCorticotroppin-releasing factor受容体1型(CRFR1)cDNA全長をプローブしてサザンブロット法にてRELPの検出を行ったが、神経性食欲不振症患者と健康女性ともにRELPを認めなかった。ゲノムDNAは、既報のヒトCRFR1のシークエンスに従って、イントロン内にプライマーを設定してエクソンごとにDNA断端をPCR法にて増幅後、その産物をシークエンスした。エクソン1-5および7-14とそれぞれのエクソン前後のイントロン30塩基には点異変を認めず、塩基配列はよく保存されていた。しかし、15名中4名に、エクソン9とその前後のイントロンに複数の点変異を認めた。内訳は以下のごとくである。Ile^<218>→Met^<218>、Lys^<250>→Asn^<250>、Tyr^<252>→His^<252>のheterozygousな変異をそれぞれ2名に認めた。Val^<244>→Ala^<244>のhomozygousな変異を2名に認めた。Ala^<245>→Pro^<245>のheterozygousな変異を1名に、homozygousな変異を1名に認めた。更に、Phe^<240>→Leu^<240>、Ile^<242>→Met^<242>、Tyr^<253>→Cys^<253>、Glu^<256>→Gly^<256>のheterozygousな変異を3名に認めた。1名ではTyr^<253>→Asp^<253>認めた。9カ所のアミノ酸の置換のうち、Tyr^<252>→His^<252>はラット型のアミノ酸への置換である^<20)>。Ala^<245>→Pro^<245>はconservativeな置換であるが、他はnon-conservativeであった。
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