成長ホルモンの拍動性分泌におけるアンドロゲンの意義

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11671100
• 研究機関: 日本医科大学
• 研究代表者: 南 史朗 日本医科大学, 老人病研究所, 教授 (10192361)
• キーワード: 成長ホルモン / 分泌リズム / アンドロゲン / ソマトスタチン / フィードバック調節 / 視床下部 / c-fos / ニューロペプチドY

研究概要

成長ホルモン(GH)の中枢性分泌調節機構として重要なのは、分泌リズム形成機構とGH自身による視床下部へのフィールドバック調節機構である。ラットではGH分泌パターンに著明な雌雄差があり、これはアンドロゲンによるソマトスタチンの分泌修飾作用によって生じると考えられる。本年度研究の目的は、NPYを介するGHのオートフィードバック機構の検討、およびGH拍動性分泌に関与する脳内アンドロゲン作用部位を明らかにすることにある。
1.新生児期にグルタミン酸Naを投与したラット(MSGラット)では視床下部弓状核細胞が破壊され、GH分泌が著減し、NPY細胞もほとんどなくなる。GHのオートフィードバックにおけるNPY細胞の意義を検討する目的で、MSGラットにヒトGHを投与して、c-fosの遺伝子発現をin situハイブリダイゼイションで観察した。MSGラットではNPYの減少に比例してc-fos遺伝子発現誘導も減少していた。GHのオートフィードバック作用におけるNPY細胞の重要性が示唆された。
2.卵巣摘出雌ラットにジヒドロテストステロン(DHT)を静脈内投与すると6時間以内にGH分泌パターンは雄化した。卵巣摘出ラットにDHTを静脈内投与し、経時的にラットの脳内に誘導されるc-fos遺伝子発現をin situハイブリダイゼイションで観察した。アンドロゲン受容体の存在部位にほぼ一致してc-fos遺伝子発現が誘導された。これらの部位にDHTを微量局所投与してGHの分泌動態に与える効果を観察した。卵巣摘出雌ラットの視索前野に投与した時にはGH分泌パターンは雄型に変わったがその他の部位-BST、視床下部室周囲核、腹内側核-に投与した時には変化を認めなかった。アンドロゲンは視索前野に作用して雄型のGH分泌パターンをつくり出すことが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Shiro Minami: "Cellular localization of prolactin -releasing peptide messenger RNA in the rat brain"Neurosciencr Letters. 266. 73-75 (1999)
• [文献書誌] Marumi Katsumata: "Familial hypercholesterolemia Utah kindred with novel R103W mutation in Exon 4 of the LDL receptor gene"Japanese Heart Journal. (in press).
• [文献書誌] Reiko Tokita: "Prolactin secretion in response to prolactin-releasing peptide(PrRP)and the expression of the PrRP gene in the medulla oblongata are estrogen dependent in rats"Neuroscience Letters. 276. 103-105 (1999)
• [文献書誌] Takashi Yokota: "Genomic organization and chromosomal mapping of ELKS, a gene rearranged in a papillary thyroid carsinoma"Journal of Human Genetics. 45. 6-11 (2000)
• [文献書誌] Hitoshi sugihara: "Effect of insulin-like growth factor-I on growth hormone-releasing factor receptor expression in primary rat anterior pituitary cell culture"Neuroscience Letters. (in press).
• [文献書誌] Hideki Tamura: "Masculinizing effect of dihydrotestosterone on growth hormone secretion is inhibited in ovariectomized rats with anterolateral deafferentation of the medial basal hypothalamus"Journal of Neuroendocrinology. (in press).