ラットでは成長ホルモン(GH)の分泌パターンに顕著な性差がある。卵巣摘除した(OVX)ラットにジヒドロステロン(DHT)を2週間投与するとGHの分泌パターンが雄化する。アンドロゲンがsomatotropic axisと相互作用する部位は視床下部だと考えられる。しかし、その作用機序の詳細は不明である。この現象を理解するために次のような検討を行った。 (1)OVXラットに無麻酔下で0.01-1mgのDHTを皮下投与したところ、GH分泌パターンは6から12時間後には雄型に変化した。しかし、このような変化は正常な雌ラットでは認められなかった。(2)視床下部基底部前側方離断術(ALC)をおこないソマトスタチンの影響を取り除いたOVXラットにDHTを投与しても拍動性のGHの分泌あるいはGH濃度の変化は起きなかった。(3)ラットの視床下部に微量のDHTを局所投与して、GH分泌パターンが雄化するDHTの作用部位を調べた。DHTを視索前野内側領域に投与したときにGH分泌パターンは雄化した。(4)視索前野内側領域にDHTが作用することを確認するために、DHTの静脈内投与に反応してc-fos遺伝子発現が誘導されるかin situ hybridizationで観察した。GH投与2時間後に視索前野内側領域にc-fos mRNAの発現が観察された。 これらの結果は、アンドロゲンは視索前野内側領域に作用してGHの分泌パターンの雄化をもたらすこと、エストロゲンがDHTの雄化に対する効果を阻害することを示唆する。
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