現在、糖尿病患者は、日本人だけで680万人いると推定されており、40歳以上では、10人に1人糖尿病患者がいると考えられている。このように現在、非常に頻度の高い疾患となった糖尿病であるが、日本人では、糖尿病患者のうち、95%以上は2型糖尿病であることが明らかになっている。我々は、2型糖尿病の感受性遺伝子を明らかにするため、多数の遺伝子多型を用いて、発症感受性遺伝子の検索を行っている。まず、2型糖尿病患者の末梢血より、DNAを抽出した。また同時に糖尿病を有しない対照群の日本人からもDNAを抽出し、両者で、遺伝子多型の頻度の差異があるか否かの検索をおこなった。まず、これまで既に報告されている遺伝子多型が、糖尿病発症にどの程度、寄与しているかの検索を行った。これまでのデータから、糖尿病発症と密接なかかわりがあることが、判明しているミトコンドリア遺伝子を対象に検索した。以前の検索より多数の患者を対象に、検索をおこなったところ、3243部位のA-G点変異と、3316のG-A点変異が糖尿病発症に関与している可能性が示唆された。また、その他、成人病の発症に関与していると考えられている遺伝子多型についても、検索し、A3243G点変異ほどの、強い影響はないものの、糖尿病発症に関わっていることが示唆された。このような、結果より、ミトコンドリア遺伝子異常は、現在考えられているよりも、糖尿病発症にたいする寄与は大きい可能性がある。以前は、ヘテロプラスミーの点変異が病原性があると考えられていたが、今回検索した、後者2つの点変異は、いずれもホモプラスミーであり、ホモプラスミーの遺伝子異常でも、病因的意義があると推察された。
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