糖尿病は多因子疾患であり、遺伝的素因が重要と考えられている。これまで、特殊な糖尿病の亜型の症例を対象として遺伝子異常の検索が進められてきたが、大部分の糖尿病の原因遺伝子の解明は遅々として進んでいない。最近、コーカソイド人において糖尿病の感受性遺伝子についての報告がいくつか認められた。われわれは、日本人の2型糖尿病の原因遺伝子を検索するため、無作為に2型糖尿病患者を選び、同意取得後、末梢血より構造DNAの分離抽出を行っている。この作業は非常に手間のかかるものであり、現在までに得られたサンプル数をさらに増やしてゆく必要があると考えている。現在までに得られたサンプルについて、遺伝子検索を並行して進めている。これまで、血縁関係のない、2型糖尿病症例をあつめ、それらの遺伝子の塩基配列を調べることにより、SNPと呼ばれる、数々の遺伝子多型の同定を行ってきた。また、同時に糖尿病の候補遺伝子の遺伝子内もしくは、その近傍に存在する遺伝子多型の解析も行ってきた。これまでの検索では、有為差をもって2型糖尿病と連関を示す遺伝子多型は認められてはいない。これは、現在まで分離した構造DNAの数が十分でないことにも起因すると考えられるため、さらなるサンプル数の増加を試みているところである。しかしながら、これまでの検索により、インスリン分泌動態とある程度の連関が示唆されるものも認められており、現在、他の臨床プロフィールとの連関等の検索をすすめているところである。今後のさらなる検索が必要な段階と思われる。
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