日本において2型糖尿病はますます増加傾向を示している。日本人では、もともと遺伝的素因として、インスリン分泌不全が重要な役割を演じてきたと考えられている。しかし、近年の食生活をはじめとする、生活習慣の悪化から、インスリン抵抗性の亢進が発症にますます関与してきていると指摘されている。したがって、遺伝的素因としても、インスリン分泌に関与する遺伝子群のみならず、インスリン抵抗性に関与する遺伝子群も、発症感受性を著しく亢進させる原因となっている可能性がある。これまで、われわれは無作為に選んだ2型糖尿病患者を対象として、末梢血の白血球より、構造遺伝子(genomic DNA)の分離抽出を行ってきた。また、抽出構造遺伝子の数を増やす作業と平行して、2型糖尿病の候補遺伝子の近傍に位置する、遺伝子多型の検索も進めてきた。このことにより、あらたなSNP(single nucleotide polymorphism)の同定を行い、糖尿病感受性遺伝子の同定に一歩近づくことが可能となってきている。また、国内、海外で発見された、候補遺伝子、糖尿病感受性遺伝子についても、日本人での検索を進めている。その結果、既報の遺伝子や遺伝子多型については、欧米白人とは、必ずしも遺伝子多型の頻度や、連関解析の結果も一致しておらず、連関の存在も人種間で、大きく異なっていることが判明した。即ち、人種の違いによる、感受性の相違が存在すると考えられる。これまで、われわれが、同定した、遺伝子多型については、2型糖尿病と有意な連関は、認められていない。また、日本人で認められると報告された、アミリンの遺伝子多型(S20G)についても我々のもつサンプルサイズでは、連関が認められなかった。即ち、同多型の2型糖尿病との連関は必ずしも強いものではなく、サンプルサイズが大きくないと、有意な差異は、認められない可能性が高い。このように、今後の課題としては、さらにサンプルサイズを大きくしていくことが重要と考えられた。
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