本申請では培養細胞においてゲノム上のVEGF遺伝子第1エクソンをルシフェラーゼ遺伝子で置き換えるノックイン法により、前述の同定物質、他の因子による転写調節系を解明すること、さらに同定物質を糖尿病モデル動物に投与し、糖尿病血管合併症進展の抑制を検討することを目的としている。 VEGF遺伝子転写抑制により、影響をうける遺伝子群を同定するために、VEGF転写抑制因子を添加した、網膜色素細胞、血管平滑筋細胞から抽出したmRNAを用いてDNAアレイによる解析を施行した結果、細胞接着因子を含む7種類の遺伝子発現が2倍以上増加し、RNAaseプロテクションアッセイでも同様の結果が得られた。高酸素負荷ラット、ガラクトース食負荷GKラットの2系を用いて、VEGF遺伝子転写抑制物質投与による血管内皮細包の増殖抑制効果、タンパク尿抑制効果を検討した結果、網膜血管の増殖に関しては、網膜および腎組織においてホルマリン固定後パラフィン包埋した標本における増殖血管内皮細胞、メサンギウム細胞の核数のカウント、網膜血管内皮細胞およびペリサイトのTnnnel法によるアポトーシスの観察といった病理学的検討を行ったが有意な抑制効果を認めなかった。一方で、尿中蛋白排泄量は有意に減少し、尿蛋白2次元泳動による尿蛋白の解析では、低分子量蛋白の排泄低下が顕著に認められた。
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