研究概要 |
マウス培養膵β細胞株であるβHC9細胞を用い、1mMパルミチン酸を含む培養液及び含まない培養液で72時間培養した。グルコース刺激に対するインスリン分泌をみると、低濃度グルコースでは抑制、高濃度グルコースでは分泌が亢進していた。細胞を回収してtotal RNAを調製し、cDNA、さらにビオチンラベルしたcRNAを作成し、断片化した後アマシャムGeneChipシステムにて解析を行った。チップとしてはAffymetrix社製マウスアレイU74セット(A、B、C)を用いた。これにより、UniGene登録の既知遺伝子(完全長)約6,000種、及びEST約30,000種をスクリーニングしたことになる。パルミチン酸添加により遺伝子発現が2.5倍以上増加した遺伝子・ESTを44個、2.5倍以上低下したものを66個得たが、この中には脂質代謝に関連するものも認められたほか、これまで脂質代謝やインスリン分泌に関係が報告されていなかった遺伝子も認められた。 GeneChipシステムの問題点として、発現変化の定量性を他の方法で確認する必要があることが指摘されており、ESTも含めて定量RT-PCR法(TaqMan)を用いて確認作業を行っている。今回の結果を、当研究において平成12年度に、同様のRNA試料を用いて蛍光ディファレンシャルディスプレイシステム(HIEROGLYPH, GENOMYX 社)にて行った解析結果と比較した。得られた遺伝子群は必ずしも一致しないが、方法論の違いによるものと考えている。いずれにしても、膵β細胞においてグルコース以外の栄養素により発現が変化する遺伝子を2つの全く異なる方法で網羅的にスクリーニングできたと考えており、現在各遺伝子の生理的意義を解析している。またアミノ酸に反応して発現が変化する遺伝子群も同様にスクリーニング中である。
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