研究概要 |
マウス培養膵β細胞株であるβHC9細胞を用い、まず脂肪酸輪送タンパク(FATP)とアシルCoA結合タンパク(ACBP/DBI)について、発現アイソイフォームを確認した。前者はFATP4が主なサブタイブで、他にFATP1及び2が発現、後者はdegenerate-PCRを行ったが既報の遺伝子のみであった。次にβHC9細胞を、1mMパルミチン酸を含む培養液及び含まない培養液で72時間培養した。グルコース刺激に対するインスリン分泌をみると、低濃度グルコースでは抑制、高濃度グルコースでは分泌が亢進していた。この系で細胞からtotalRNAを調製し、蛍光ディファレンシャルディスブレイ(FDD)法(HIEROGLYPH, GENOMYX社)およびマイ・クロ・アレイ(GeneCbipシステム、マウスアレイU74セットA、B、C)法にて、発現に差のある遺伝子を系統的に探索した。パルミチン酸添加により発現が上昇・低下した遺伝子は、ESTやアノテーション不明の配列も含め、FDD法で解析可能だったものが全部で31個、一方マイクロアレイ法では、上昇44個・低下66個、であったが、方法論の違いを反映してか両者の結果にオーバーラップはみられなかった。この中には脂質代謝酵素なども認めたが、これまで脂質代謝やインスリン分泌に関係が報告されていなかった遺伝子も認められた。なおGeneChipについては、変動上位10遺伝子・ESTについては定量RT-PCR法(TaqMan)を用いて発現変化の確認作業を行った。 新生児期に高インスリン血性低血糖症(PHHI)を生じ、高アンモニア血症をともなう症例で、グルタミン酸脱水素酵素の遺伝子異常を同定した。切除膵の組織学的検討では、膵内分泌細胞のびまん性増殖がみられた。アミノ酸代謝と糖代謝、インスリン分泌のリンクとして興味深いと考え、若干の検討を行った。
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