糖尿病における酸化ストレス産生源としてのミトコンドリア機能異常 高血糖状態での酸化ストレス産生源としてミトコンドリアの役割が注目されている。 我々は、ストレプトゾトシン糖尿病ラットを用いて、糖尿病状態でのミトコンドリア機能と酸化ストレスの関連を検討した。8週令糖尿病ラット心筋ミトコンドリアでは過酸化脂質が対照の5倍に増加し、過酸化水素の基礎産生量も2倍に増加していた。そこで、活性酸素産生源である電子伝達系酵素群について検討したところ、電子伝達系を構成する、ミトコンドリア遺伝子由来のmRNA量は対照の30-40%低下し、インスリン治療で改善したが、核由来の遺伝子発現の低下は糖尿病群でも認めずミトコンドリア遺伝子特異的な発現低下が認められた。 この結果と一致して、単離ミトコンドリアを用いたin vitroでの転写および翻訳活性でも糖尿病由来のミトコンドリアでは転写/翻訳活性が低下しており、インスリン治療で改善した。核遺伝子であり、ミトコンドリア内でミトコンドリア遺伝子の転写因子として働くmtTFAの発現はmRNA、タンパク量ともに糖尿病状態で変化していなかった。しかしながら、ゲルシフト解析では糖尿病ラット心筋より単離したミトコンドリア内のmtTFAのDNA結合は著明に低下しており、この結合低下がミトコンドリア遺伝子発現の低下の原因と考えられた。糖尿病状態ではmtTFAになんらかの質的な変化があると考えられ、それがミトコンドリア電子伝達系酵素群の一部蛋白発現を低下させ、電子のリークから活性酸素の産生亢進へと繋がる可能性が示唆された。
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