多因子疾患を遺伝学的に解析する場合、多くのDNA多型について検索する必要があるため、限られたDNA検体を有効に利用する必要がある。このためDNA検体を全ゲノム領域にわたって増幅するPrimer extension preamplification(PEP)法に着目した。DNA検体をPEP法で増幅した者をtemplate DNAとして4個のマイクロサテライトマーカーについてPCRを行い、PEP法で増幅を行わなかったDNA検体をtemplate DNAとした場合と比較した結果、PCRにおける増幅効率や遺伝子型タイピングにおける正確性に問題を認めず、またPEP処理により約50倍のDNA多型解析に供することが可能であることを見出し、PEP法が多因子疾患の遺伝学的解析に有用であることを明らかにした。PEPで処理したDNA検体を用いて、第二染色体長腕上のインスリン依存糖尿病発症遺伝子である。IDDM7(D2S152)・IDDM12(CTLA4)・IDDM13(D2S137)について同一のデータセットで相関解析を行った結果、D2S137で疾患との相関が最も強いことから、上記3発症遺伝子のうちIDDM13が日本人のインスリン依存糖尿病に最も強く関与することを明らかにした。またD2S137の周辺の遺伝子マーカーを解析した結果、IDDM13がD2S143からD2S2382までのD2S137を含む約4cMの領域に存在することを明らかにした。
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