糖尿病で形成亢進し細胞障害性を有する高反応性ジカルボニル化合物3-deoxyglucosoneを不活性化する機構において重要な役割をしているアルデヒド還元酵素(ALR)の遺伝子をクローニングするために、まず、マウスALRcDNAのクローニングを試みた。既知のラットALRcDNA塩基配列の中で類似酵素と比較してALRに比較的特異性が高いと思われる部位のoligonucleotideを作製してプライマーとし、マウス肝cDNAライブラリーを鋳型にPCRを施行した。次に、そのPCR産物をプローブとしてマウス肝cDNAライブラリーに対してハイブリダイゼーション法によってcDNAをスクリーニングし全長のマウスALRcDNAをクローニングした。塩基配列解析の結果、ラットALRcDNA塩基配列との相同性は95%であり、ヒトALRcDNA塩基配列との相同性は85%であることが判明した。 引き続き、null mutationによるノックアウトマウス作製を目的としたターゲッティングベクターを構築するために、上記で得られたマウスALRcDNA塩基配列の情報からコドン開始部位を含むプローブを作製した。現在、このプローブを使ってマウス肝ゲノムライブラリーに対してハイブリダイゼーション法によって目的に合ったゲノムDNAのスクリーニングを行っている。今後は、ターゲッティングベクターを構築してALR遺伝子ノックアウトマウスを作製していくことによって、この酵素の機能が固体レベルで明らかになると共に、数少ない糖尿病性合併症のモデル動物としてその発症機序の解明が可能になることが期待できる。
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