糖尿病で形成が亢進する糖化反応中間体3-deoxyglucosone(3-DG)は、高反応性のジカルボニル化合物で細胞障害性を有しているため糖尿病細小血管症進展の原因物質となり得ることが提唱されている。これに対する生体内防御機構として、3-DGを非活性物質に代謝するアルデヒド還元酵素(ALR)の重要性が指摘されていることから、本研究ではこのALRのノックアウトマウスを作製することによって3-DG代謝機構と細小血管構成細胞に現れる機能変化との関係を解析することを目的としている。平成11年度には、既知のラットALR cDNA塩基配列を参考にしてマウス肝cDNAライブラリーを鋳型にPCRを施行し、次にそのPCR産物をプローブとしてマウス肝cDNAライブラリーから全長のマウスALR cDNAをクローニングした。平成12年度には、上記の塩基配列情報からコドン開始部位を含むプローブを作製し、マウス肝ゲノムライブラリーからハイブリダイゼーション法によってほぼ全長のALRゲノムDNAを得ることができ遺伝子地図を作製した。そして、それを元にエクソン2〜5部分で相同組換えを起こすことを目的としたターゲティングベクターを作製した。同時に、遺伝子導入されたES細胞の中から相同組換えを起こした細胞を有効にサザンブロットによってスクリーニングすることができるようなプローブの設定も行った。 今後は、相同組換え体ES細胞をマウス胚にマイクロインジェクションしてキメラマウスを作製後引き続きノックアウトマウスを確立し、その動物における3-DGの代謝変化とそれに伴う細小血管の機能変化を解析する。
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