研究概要 |
本研究は糖尿病性血管合併症の発症機序の一つとして"糖尿病における酸化ストレスがParaoxonase(PON1)の機能低下により処理できないため"と仮説し証明することと,なぜ,糖尿病でPON1の機能が低下するかを明らかにすることである.これのため1)His-tagをもつPON1融合蛋白PON248(アミノ酸l08-355)を用いて家兎にてポリクロナール抗体を作成し,さらに異なる融合蛋白PON116(アミノ酸223-338)を標準物質として抗原固相化競合EIAを作成し,PON1の蛋白量測定を確立した.2)本EIAを持ちいて2型糖尿病のPON1濃度を測定した結果,健常対照に比してPON1の酵素活性は有意に低下するも濃度は差が無く,酵索のspecific activityの低下であることが分かった.3)PON1には遺伝子多型192Q/Rが存在するが,各遺伝子型から得たPON1含有HDLを精製しLDL酸化能を検討したところ,192QQに対し192RR遺伝子型PON1含有HDLは酸化抑制が低下していることが証明された.4)PON1遺伝子上流(ATG開始コドンより-l08)にT/Cの遺伝子多型を発見したが,同部位はSp1結合配列に一致し,reporter geneassayを用いて転写活性に影響することを明らかにした.さらに,ゲルシフトアッセイにより本配列部位にSp1が結合することを確認し,同部位がPON1の発現に重要であることを証明した.
|