研究概要 |
本研究は糖尿病性血管合併症の発症機序の一つとして"糖尿病における酸化ストレスがparaoxonase(PON1)の機能低下により処理できないためと"仮説し証明することであるが,昨年度は糖尿病ではPON1の酵素活性が低下するも蛋白濃度は低下しないことを明らかにした.また,同遺伝子上流に新たな遺伝子多型を見出し,PON1遺伝子の転写活性に影響することを明らかにした.これを踏まえ,本酵素の転写活性と酸化ストレスとの関係,および転写因子の関係をみた.その結果,PON1遺伝子上流を組み込んだluciferase reporter vectorとHepG_2細胞を用いたreporter gene assayにより,IL1刺激で転写抑制,IL6刺激で促進することを証明した.また,低比重リポ蛋白(LDL)および酸化LDLで刺激すると転写活性は48時間後には増加する反応がみられ,酸化LDLによる刺激でより強く反応した.PON1の転写に影響する転写因子の一つは前年度Sp1であることを推定したが,新たに,Sp1発現vectorを作成し,PON1-luciferase repoter vectorとco-transfectionした結果,PON1転写活性は3-5倍まで増加し,転写因子Sp1がPON1発現に重要な作用していることを証明した.以上のことより,糖尿病ではPON1蛋白の酵素としての働きは著明に減じていること,一方ではPON1蛋白濃度の低下がみられず,酸化ストレスで転写活性がup-regulateされている可能性を示した.その最終転写因子としてSp1が重要であることが推定された.
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