研究概要 |
糖尿病血管合併症の成因としてプロテインキナーゼC(PKC)の活性亢進は、研究代表者(井口)ばかりでなく、国内外の他の研究者によりも検討され確立されつつあるが、PKCの活性亢進がどのような血管壁機能の変化をもたらし糖尿病血管障害の成因と結びつくかについては明らかにされていない。本研究では、PKCによる制御が推定されるギャップ接合(GJ)を介した細胞間コミュニケーション機能の糖尿病血管壁細胞における異常と血管合併症の成因としての意義を確立する。培養血管内皮細胞や平滑筋細胞のGJ機能は、高グルコース(HG)条件下(400mg/dlグルコース)24時間または48時間の培養で、100mg/dlグルコース条件下に比し有意に抑制された。HG条件下で構成蛋白コネクシンー43(Cx)の発現量は変動を認めなかったが、Cxの燐酸化亢進を認めた。HG条件下でのGJ機能抑制やCx燐酸化亢進は、PKCインヒビターにより回復した。ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの心筋の検討でも、対照ラットに比しCxの燐酸化亢進を認めた。さらに、糖尿病ラットでは、心室内伝導を反映する心電図上のQRS幅は有意に延長し、心室内伝導障害が示唆された。PKCβ阻害薬の投与により、糖尿病心筋Cxの燐酸化亢進は改善し、同時にQRS幅の延長も改善された。高グルコースによるGJ機能の低下は,糖尿病血管壁の種々の機能異常を惹起する可能性が示唆された。
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