1.従来より膵ランゲルハンス氏(ラ氏島)の血流量は麻酔下動物で測定されてきたが、麻酔による影響やカテーテル挿入などの外科的ストレスがラ氏島血流量に影響を及ぼす可能性が指摘されてきた。今年度は麻酔や手術による影響を除外するため、無麻酔下でラ氏島血流量を測定する実験系を確立した。ラットに麻酔下でカテーテルを挿入し、数日後に無麻酔下でカラーマイクロスフェアを用いて、ラ氏島の血流量を測定した。その結果、ラ氏島血流量自体は麻酔による影響をうけなかったが、全膵血流に占めるラ氏島血流の割合は麻酔下で有意に低値であり、膵臓内の血流分布は麻酔による影響をうけることが明らかとなった。 2.上記の実験系を用いて、インスリンによる低血糖がラ氏島血流量に及ぼす影響を検討した。ラ氏島血流量は低血糖によって変化しなかったが、全膵血流に占めるラ氏島血流の割合は低血糖によって有意に低下した。また、ムスカリン受容体拮抗剤であるアトロピンの前投与で、ラ氏島血流量は増加し、低血糖によるラ氏島血流量の増加抑制には迷走神経ムスカリン受容体が関与していることが示された。
|