1 膵ランゲルハンス氏島(ラ氏島)血流量測定の開発 本研究ではラ氏島の微小循環の評価法として、ラ氏島血流量を測定した。ラ氏島は膵臓内に散在する小器官であるため、ラ氏島血流量の測定にはカラーマイクロスフェア法を用いた。従来は1色のカラーマイクロスフェアしか用いられていなかったが、本研究では色の異なるマイクロスフェアを用いることにより複数回の測定が可能になった。 2 肥満2型糖尿病モデルにおけるラ氏島血流量の検討 上記の方法を用いて、肥満2型糖尿病モデルであるOLETFラットのラ氏島血流量を測定した。このモデルのラ氏島血流量は対照の正常ラットと比較して約2倍に増加しており、しかも、肥満や糖尿病を発症する前より増加していた。このOLETFラットにスクロースを投与し、糖尿病を悪化させると、ラ氏島血流量の増加は少なくなったが、食餌制限により糖尿病の発症を予防すると、ラ氏島血流量はさらに増加した。また、肥満や糖尿病を発症する前の若年OLETFラットに一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤を投与すると、ラ氏島血流量は低下し、対照群と有意差を認めなくなった。OLETFラットのラ氏島過剰灌流状態にNOが関与している可能性が示された。 3 コレシストキニン(CCK)がラ氏島血流に及ぼす影響 CCKは膵外分泌刺激作用とともにインスリン分泌促進作用を有する。本研究ではCCKがラ氏島血流量に及ぼす影響を検討した。その結果、CCKはラ氏島血流量増加作用があり、その作用はCCK-A受容体を介し、NO依存性であることが明らかとなった。また、迷走神経系は関与していないことも示された。 4 ナテグリニド(NG)がラ氏島血流量に及ぼす影響 NGは経口血糖降下薬の一つであり、速効性にインスリン分泌を促進させることが知られているが、その機序は不明である。本研究において、NGはラ氏島血流量を増加させることが示された。一方、トルブタミドにはこのような作用は認められなかった。NGの速効性作用にラ氏島血流増加作用が関与していることが示唆された。 5 無麻酔下におけるラ氏島血流量の測定の低血糖の影響 上記の実験は麻酔下に行われたので、本実験では麻酔の影響を除くため、無麻酔下でラ氏島血流量を測定した。その結果、ラ氏島血流量自体には変化がなかったが、麻酔下では膵臓内の血流分布が変化することが見出された。また、低血糖下では迷走神経を介して、ラ氏島血流量の増加が抑制されていることが示された。
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