先天性代謝異常症であるチアミン反応性貧血症候群(TRMA、OMIM 249270)は巨赤芽球性貧血と糖尿病、難聴を三主徴とし、チアミンの大量投与によりそれらの症状が軽減するチアミン依存症である。本症はチアミン反応性楓糖尿病や高乳酸血症のような補酵素チアミンピロリン酸依存性酵素の遺伝的障害によるものではない。動物では摂取したチアミンをチアミンピロリン酸として利用するためにはチアミン輸送タンパク質とチアミンピロホスホキナーゼ(TPK)が必要であり、研究代表者は本症の異常酵素として最も可能性が高いと考えられたTPK遺伝子の単離を試みた。そして、マウスのESTデータベースのホモロジー検索、2-step PCR法、および酵母のTPK欠損変異株の機能相補スクリーニングを組み合わせて、初めて哺乳類のTPK cDNAをマウスより単離した。一方、イスラエルTechnion-Israel Institute of TechnologyのCohenらとの共同研究でTRMA遺伝子の染色体マッピングを進めていたが、ついに原因遺伝子(THTR-1)を決定し、THTR-1が高親和性チアミン輸送タンパク質をコードすること、日本人を含む数家系での変異部位等を明らかにした。現在、ヒトのTPK cDNAの単離に成功したので、TRMA患者細胞におけるTPKの発現等について検討している。
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